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https://github.com/XRPLF/xrpl-dev-portal.git
synced 2025-11-27 23:25:51 +00:00
Japanese translation: add all concepts
This commit is contained in:
@@ -0,0 +1,17 @@
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# 結果のファイナリティー
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トランザクションがコンセンサスレジャーに適用される順序は、レジャーがクローズされ、そのトランザクションセットがコンセンサスプロセスによって承認されるまで最終的なものではありません。最初に成功したトランザクションはその後で失敗する可能性があり、最初に失敗したトランザクションはその後で成功する可能性があります。さらに、あるラウンドでコンセンサスプロセスによって拒否されたトランザクションは、後のラウンドでコンセンサスに達する可能性があります。
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検証済みレジャーには、失敗したトランザクション (`tec`結果コード)だけでなく、成功したトランザクション(`tes`結果コード)も含まれる可能性があります。それ以外の結果のトランザクションはレジャーに含まれません。
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結果コードがそれ以外の場合は、結果が最終的なものかどうかを判断するのは困難です。次の表は、トランザクションの結果がいつ確定するかをまとめたものです。この内容は、トランザクション送信からの結果コードに基づいています。
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| エラーコード | ファイナリティー |
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|:----------------|:-----------------------------------------------------------|
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| `tesSUCCESS` | 検証済みレジャーに含まれる場合は確定 |
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| すべての`tec`コード | 検証済みレジャーに含まれる場合は確定 |
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| すべての`tem`コード | 確定(トランザクションが有効になるようにプロトコルが変更される場合を除く) |
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| `tefPAST_SEQ` | 検証済みレジャーに同じシーケンス番号の別のトランザクションが含まれている場合は確定 |
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| `tefMAX_LEDGER` | 検証済みレジャーにトランザクションの`LastLedgerSequence`フィールドよりも大きいシーケンス番号があり、検証済みレジャーにそのトランザクションが含まれていない場合は確定 |
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他のトランザクション結果は確定でない可能性があります。その場合、トランザクションはその後に成功または失敗する可能性があります(特に、条件の変更によってトランザクションの適用を妨げる原因がなくなった場合)。例えば、まだ存在していないアカウントにXRP以外の通貨を送信しようとしても失敗しますが、別のトランザクションで送信先アカウントを作成するのに十分なXRPを送信すれば成功します。サーバーは、一時的に失敗した署名付きのトランザクションを保存してから、事前に確認せずに後でそれを正常に適用する場合があります。
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@@ -0,0 +1,195 @@
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# 取引の基本
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_取引(トランザクション)_ は、XRP Ledgerを変更する唯一の方法です。[コンセンサスプロセス](consensus.html)に従って署名され、送信され、検証済みのレジャーバージョンに承認された場合にのみ、トランザクションは最終的なものになります。レジャーのルールによっては、 _[疑似トランザクション](pseudo-transaction-types.html)_ も生成されます。このトランザクションは署名も送信もされませんが、コンセンサスによって承認されなければならないことは同様です。失敗したトランザクションであっても、スパム対策の[トランザクションコスト][]を支払のためXRPの残高が変わるため、レジャーに記録されます。
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### トランザクションの識別
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署名付きトランザクションには、それを識別する固有の`"hash"`があります。トランザクションを送信すると、サーバーの応答でハッシュが返されます。[account_txコマンド](account_tx.html)を使用して、アカウントのトランザクション履歴でトランザクションを検索することもできます。
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だれでも最終的なステータスを確認として[ハッシュによってトランザクションを調べる](look-up-transaction-results.html)ことができるため、トランザクションハッシュは「支払いの証明」として使用することができます。
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## 請求コストの正当化
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失敗したトランザクションに対しても[トランザクションコスト](transaction-cost.html)が発生するのは不公平に思えるかもしれませんが、正当な理由から`tec`クラスのエラーが存在します。
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* 失敗したトランザクションの後に送信するトランザクションでは、シーケンス値の番号を変更する必要はありません。失敗したトランザクションをレジャーに組み込むと、トランザクションのシーケンス番号が順に使われ予想される順序が保持されます。
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* ネットワーク全体にトランザクションを拡散されられると、ネットワークの負荷が増大します。トランザクションコストを強制することにより、攻撃者が失敗したトランザクションでネットワークを乱用することが難しくなります。
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* トランザクションコストは実際には非常に少額であるため、大量のトランザクションを送信している場合を除き、ユーザーに害を及ぼすことはありません。
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## 取引の承認
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分散型XRP Ledgerでは、デジタル署名によって、トランザクションが一定のアクションを起こすが承認されていることが証明されます。署名されたトランザクションのみがネットワークに送信され、有効なレジャーに含まれます。署名付きトランザクションは不変です。その内容は変更できず、他のトランザクションでこの署名を使用することはできません。 <!-- STYLE_OVERRIDE: is authorized to -->
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トランザクションは、次のいずれかの署名によって承認できます。
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* 送信元アドレスと数学的に関連付けられている、マスター秘密鍵による単一の署名。[AccountSetトランザクション][]を使用して、マスターキーペアを無効または有効にできます。
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* アドレスに関連付けられているレギュラー秘密鍵と一致する単一の署名。[SetRegularKeyトランザクション][]を使用して、レギュラーキーペアを追加、削除、または置き換えることができます。
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* アドレスが所有する署名者のリストと一致する[マルチ署名](multi-signing.html)。[SignerListSetトランザクション][]を使用して、署名者のリストを追加、削除、または置換することができます。
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署名の種類に関係なく、あらゆるタイプのトランザクションを承認できます。ただし、次の例外があります。
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* マスター秘密鍵だけが[マスター公開鍵](accountset.html)を無効にできます。
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* マスター秘密鍵だけが[凍結機能を永続的に放棄](freezes.html#no-freeze)できます。
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* アドレスからトランザクションに署名する最後の方法を削除することはできません。
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マスターキーとレギュラーキーペアについて詳しくは、[暗号鍵](cryptographic-keys.html)を参照してください。
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<!--{# Add this reference after signatures concept doc is published. For more information about signatures, see [Understanding Signatures](concept-signatures.html). #}-->
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## トランザクションへの署名とトランザクションの送信
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XRP Ledgerにトランザクションを送信するには、いくつかの手順を実行する必要があります。
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1. [未署名のトランザクションをJSON形式](#未署名のトランザクションの例)で作成します。
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2. 1つ以上の署名を使用して[トランザクションを承認](#取引の承認)します。
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3. `rippled`サーバーにトランザクションを送信します。トランザクションが適切に作成されている場合、サーバーはそのトランザクションを現行バージョンのレジャーに暫定的に適用し、そのトランザクションをピアツーピアネットワークの他のメンバーに中継します。
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4. [コンセンサスプロセス](consensus.html)によって、次の検証済みレジャーに含まれる暫定的なトランザクションが決定されます。
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5. `rippled`サーバーはそれらのトランザクションを正規順序で前のレジャーに適用し、それらの結果を共有します。
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6. 十分に[信頼できるバリデータ](rippled-server-modes.html#バリデータを運用する理由) がまったく同じレジャーを作成した場合、そのレジャーは _検証済み_ であると宣言され、そのレジャーの[トランザクションの結果](transaction-results.html)は不変となります。
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XRP決済の送信に関する対話型チュートリアルについては、[Send XRP](send-xrp.html)を参照してください。
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### 未署名のトランザクションの例
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JSON形式の未署名の[Paymentトランザクション][]の例を次に示します。
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```
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{
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"TransactionType" : "Payment",
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"Account" : "rf1BiGeXwwQoi8Z2ueFYTEXSwuJYfV2Jpn",
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"Destination" : "ra5nK24KXen9AHvsdFTKHSANinZseWnPcX",
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||||
"Amount" : {
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||||
"currency" : "USD",
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"value" : "1",
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"issuer" : "rf1BiGeXwwQoi8Z2ueFYTEXSwuJYfV2Jpn"
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},
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"Fee": "12",
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"Flags": 2147483648,
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"Sequence": 2,
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}
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```
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XRP Ledgerは、トランザクションオブジェクトが送信元アドレス(`Account`内)フィールドによって承認されている場合にのみ、トランザクションを中継して実行します。単一の署名によってのみ承認されたトランザクションの場合、2つの選択肢があります。
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1. バイナリーブロブに変換してオフラインで署名します。これが望ましい方法です。トランザクションの署名に使用されたアカウントの機密情報がネットワーク接続を介して送信されないことを意味するためです。
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* オフライン署名には[RippleAPI](rippleapi-reference.html#sign)を使用できます。
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2. `rippled`サーバーにトランザクションの署名を依頼します。[signコマンド](sign.html)はJSON形式のトランザクションと機密情報を受け取り、送信可能な署名付きバイナリートランザクション形式を返します。(アカウントの機密情報を送信するのは危険です。そのため、信頼できる暗号化された接続内か、またはローカル接続経由で、自分が管理しているサーバーのみに送信するようにしてください。)
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* ショートカットとして、`tx_json`オブジェクトを指定した[submitコマンド](submit.html)を使用してトランザクションへの署名とトランザクションの送信を同時に実行できます。これはテストと開発の目的の場合にのみ推奨されます。
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## 署名付きトランザクションブロブの例
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トランザクションに署名すると、ネットワークに送信できるバイナリーブロブが生成されます。この場合、`rippled`の[submitコマンド](submit.html)を使用します。署名付きブロブと同じトランザクションの例を示します。このトランザクションは、WebSocket APIを使用して送信されています。
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```
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{
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"id": 2,
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"command": "submit",
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"tx_blob" : "120000240000000461D4838D7EA4C6800000000000000000000000000055534400000000004B4E9C06F24296074F7BC48F92A97916C6DC5EA968400000000000000F732103AB40A0490F9B7ED8DF29D246BF2D6269820A0EE7742ACDD457BEA7C7D0931EDB74483046022100982064CDD3F052D22788DB30B52EEA8956A32A51375E72274E417328EBA31E480221008F522C9DB4B0F31E695AA013843958A10DE8F6BA7D6759BEE645F71A7EB240BE81144B4E9C06F24296074F7BC48F92A97916C6DC5EA983143E9D4A2B8AA0780F682D136F7A56D6724EF53754"
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}
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```
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## メタデータを含む実行済みトランザクションの例
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トランザクションが送信されたら、APIを使用して(例えば、[txコマンド](tx.html)を使用して)トランザクションのステータスを確認できます。これにより、トランザクションの指示、その結果、およびそれを実行する過程で行われたすべての変更の[メタデータ](transaction-metadata.html) が表示されます。
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**注意:** トランザクションが結果コード`tesSUCCESS`で**検証済み**のレジャーに表示されない限り、トランザクションの成功は最終的なものではありません。関連項目:[結果のファイナリティー](finality-of-results.html)
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`tx`コマンドの応答の例:
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```
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{
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"id": 6,
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"status": "success",
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"type": "response",
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"result": {
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||||
"Account": "rf1BiGeXwwQoi8Z2ueFYTEXSwuJYfV2Jpn",
|
||||
"Amount": {
|
||||
"currency": "USD",
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||||
"issuer": "rf1BiGeXwwQoi8Z2ueFYTEXSwuJYfV2Jpn",
|
||||
"value": "1"
|
||||
},
|
||||
"Destination": "ra5nK24KXen9AHvsdFTKHSANinZseWnPcX",
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||||
"Fee": "10",
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"Flags": 2147483648,
|
||||
"Sequence": 2,
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||||
"SigningPubKey": "03AB40A0490F9B7ED8DF29D246BF2D6269820A0EE7742ACDD457BEA7C7D0931EDB",
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||||
"TransactionType": "Payment",
|
||||
"TxnSignature": "3045022100D64A32A506B86E880480CCB846EFA3F9665C9B11FDCA35D7124F53C486CC1D0402206EC8663308D91C928D1FDA498C3A2F8DD105211B9D90F4ECFD75172BAE733340",
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||||
"date": 455224610,
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||||
"hash": "33EA42FC7A06F062A7B843AF4DC7C0AB00D6644DFDF4C5D354A87C035813D321",
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||||
"inLedger": 7013674,
|
||||
"ledger_index": 7013674,
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||||
"meta": {
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||||
"AffectedNodes": [
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||||
{
|
||||
"ModifiedNode": {
|
||||
"FinalFields": {
|
||||
"Account": "rf1BiGeXwwQoi8Z2ueFYTEXSwuJYfV2Jpn",
|
||||
"Balance": "99999980",
|
||||
"Flags": 0,
|
||||
"OwnerCount": 0,
|
||||
"Sequence": 3
|
||||
},
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||||
"LedgerEntryType": "AccountRoot",
|
||||
"LedgerIndex": "13F1A95D7AAB7108D5CE7EEAF504B2894B8C674E6D68499076441C4837282BF8",
|
||||
"PreviousFields": {
|
||||
"Balance": "99999990",
|
||||
"Sequence": 2
|
||||
},
|
||||
"PreviousTxnID": "7BF105CFE4EFE78ADB63FE4E03A851440551FE189FD4B51CAAD9279C9F534F0E",
|
||||
"PreviousTxnLgrSeq": 6979192
|
||||
}
|
||||
},
|
||||
{
|
||||
"ModifiedNode": {
|
||||
"FinalFields": {
|
||||
"Balance": {
|
||||
"currency": "USD",
|
||||
"issuer": "rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrBZbvji",
|
||||
"value": "2"
|
||||
},
|
||||
"Flags": 65536,
|
||||
"HighLimit": {
|
||||
"currency": "USD",
|
||||
"issuer": "rf1BiGeXwwQoi8Z2ueFYTEXSwuJYfV2Jpn",
|
||||
"value": "0"
|
||||
},
|
||||
"HighNode": "0000000000000000",
|
||||
"LowLimit": {
|
||||
"currency": "USD",
|
||||
"issuer": "ra5nK24KXen9AHvsdFTKHSANinZseWnPcX",
|
||||
"value": "100"
|
||||
},
|
||||
"LowNode": "0000000000000000"
|
||||
},
|
||||
"LedgerEntryType": "RippleState",
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||||
"LedgerIndex": "96D2F43BA7AE7193EC59E5E7DDB26A9D786AB1F7C580E030E7D2FF5233DA01E9",
|
||||
"PreviousFields": {
|
||||
"Balance": {
|
||||
"currency": "USD",
|
||||
"issuer": "rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrBZbvji",
|
||||
"value": "1"
|
||||
}
|
||||
},
|
||||
"PreviousTxnID": "7BF105CFE4EFE78ADB63FE4E03A851440551FE189FD4B51CAAD9279C9F534F0E",
|
||||
"PreviousTxnLgrSeq": 6979192
|
||||
}
|
||||
}
|
||||
],
|
||||
"TransactionIndex": 0,
|
||||
"TransactionResult": "tesSUCCESS"
|
||||
},
|
||||
"validated": true
|
||||
}
|
||||
}
|
||||
```
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||||
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<!--{# common link defs #}-->
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{% include '_snippets/rippled-api-links.md' %}
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||||
{% include '_snippets/tx-type-links.md' %}
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||||
{% include '_snippets/rippled_versions.md' %}
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@@ -0,0 +1,157 @@
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# トランザクションコスト
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XRP LedgerをスパムやDoS攻撃から守るため、各トランザクションでは少額の[XRP](https://ripple.com/xrp-portal/)が消却されます。この _トランザクションコスト_ はネットワークの負荷とともに増加するように設計されており、故意または不注意にネットワークに過剰な負荷をかけると非常に高くつきます。
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各トランザクションのトランザクションコストを支払う際には、[消却するXRPの額を指定](#トランザクションコストの指定)する必要があります。
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## 現在のトランザクションコスト
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ネットワークが標準のトランザクションに必要とする現在の最低トランザクションコストは**0.00001 XRP**(10 drop)です。これは負荷が通常より高くなると増加することがあります。
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また、[現在のトランザクションコストについて`rippled`に問い合わせる](#トランザクションコストの問い合わせ)こともできます。
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### 特別なトランザクションコスト
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一部のトランザクションには異なるトランザクションコストがあります。
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| トランザクション | 負荷スケーリング前のコスト |
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|-----------------------|--------------------------|
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| [Referenceトランザクション](#referenceトランザクションコスト)(ほとんどのトランザクション) | 10 drop |
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| [Key Resetトランザクション](#key-resetトランザクション) | 0 |
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| [マルチ署名済みトランザクション](multi-signing.html) | 10 drop × (1 + 署名の数) |
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| [フルフィルメントを伴うEscrowFinishトランザクション](escrowfinish.html) | 10 drop × (33 + (バイト単位のフルフィルメントサイズ ÷ 16)) |
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## トランザクションコストの受取人
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トランザクションコストは誰かに支払われるものではありません。XRPは取り消し不能で消却されます。XRPを新たに作ることはできないため、XRPの希少性が高まり、XRPの価値を高めることによって、すべてのXRP保有者に利益がもたらされます。
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## 負荷コストとオープンレジャーコスト
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[FeeEscalation Amendment][]が有効な場合、トランザクションコストには以下の2つのしきい値があります。
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* トランザクションコストが`rippled`サーバーの[負荷ベーストランザクションコストのしきい値](#ローカル負荷コスト)を満たしていない場合、サーバーはそのトランザクションを完全に無視します。(このロジックはAmendmentの有無にかかわらず基本的に変わりません。)
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* トランザクションコストが`rippled`サーバーの[オープンレジャーコストのしきい値](#オープンレジャーコスト)を満たしていない場合、サーバーはそのトランザクションを後のレジャーのキューに入れます。
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これによってトランザクションは大まかに以下の3つのカテゴリーに分けられます。
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* トランザクションコストが低く設定され、負荷ベーストランザクションコストによって拒否されるトランザクション。
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* トランザクションコストが高く設定され、現在のオープンレジャーに組み入れられるトランザクション。
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||||
* その中間のトランザクション。[後のレジャーバージョンのキューに入れられます](#キューに入れられたトランザクション)。
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## ローカル負荷コスト
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各`rippled`サーバーには、現在の負荷に基づいてコストしきい値が保持されています。送信するトランザクションの`Fee`値が`rippled`サーバーの現在の負荷ベーストランザクションコストより低い場合、そのサーバーはトランザクションの適用も中継もしません。(**注記:** [管理者接続](get-started-with-the-rippled-api.html)を介してトランザクションを送信する場合、トランザクションがスケーリングされていない最低トランザクションコストを満たすかぎり、サーバーはそのトランザクションを適用し、中継します。)トランザクションの`Fee`値が大半のサーバーの要件を満たさないかぎり、そのトランザクションが[コンセンサスプロセス](https://ripple.com/build/ripple-ledger-consensus-process/)を完了する可能性は極めて低くなります。
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## オープンレジャーコスト
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`rippled`サーバーにはトランザクションコストを強制する2つ目のメカニズムがあり、 _オープンレジャーコスト_ と呼ばれます。トランザクションがXRPによるオープンレジャーコスト要件を満たす場合のみ、そのトランザクションをオープンレジャーに含めることができます。オープンレジャーコスト要件を満たさないトランザクションは、[次のレジャーのキューに入れられます](#キューに入れられたトランザクション)。
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新しいレジャーバージョンごとに、サーバーは前のレジャーのトランザクション数に基づいてオープンレジャーに含めるトランザクション数のソフトリミットを選択します。オープンレジャーコストは、オープンレジャー内のトランザクション数がソフトリミットと等しくなるまでは、スケーリングされていない最低トランザクションコストと同じです。それを超えると、オープンレジャーコストはオープンレジャーに含まれるトランザクションごとに急激に増加します。次のレジャーでは、現行のレジャーにソフトリミットを超えるトランザクションが含まれていれば、サーバーはソフトリミットを高くし、コンセンサスプロセスに5秒より時間が掛かる場合はソフトリミットを低くします。
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オープンレジャーコストの水準は、絶対的なトランザクションコストではなく[標準的なトランザクションコストに比例](#手数料レベル)しています。標準よりも高い要件を持つトランザクションタイプ([マルチ署名済みトランザクション](multi-signing.html)など)は、オープンレジャーコストを満たすために最低限のトランザクションコスト要件を持つトランザクションよりも多く支払う必要があります。
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関連項目: [`rippled`リポジトリー内のFee Escalationの説明](https://github.com/ripple/rippled/blob/release/src/ripple/app/misc/FeeEscalation.md)。
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### キューに入れられたトランザクション
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`rippled`が、サーバーのローカル負荷コストは満たすが[オープンレジャーコスト](#オープンレジャーコスト)は満たさないトランザクションを受け取った場合、サーバーはそのトランザクションが後のレジャーに「含まれる可能性」を判断します。その可能性が高いと判断すれば、サーバーはそのトランザクションをトランザクションキューに追加し、他のネットワークメンバーにトランザクションを中継します。そうでない場合、サーバーはトランザクションを破棄します。[トランザクションコストは検証済みレジャーに含まれるトランザクションにのみ適用される](#transaction-costs-and-failed-transactions)ため、サーバーは、トランザクションコストを支払わないトランザクションにより生じるネットワーク負荷量を最低限に抑えようとします。
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キューに入れられたトランザクションの詳細は、[トランザクションキュー](transaction-queue.html)を参照してください。
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## Referenceトランザクションコスト
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「Referenceトランザクション」とは、負荷スケーリング前の[トランザクションコスト](transaction-cost.html)という観点からは、最も安価な(無料ではない)トランザクションと言えます。ほとんどのトランザクションのコストはReferenceトランザクションと同じです。[マルチ署名済みトランザクション](multi-signing.html)など一部のトランザクションでは、このコストの数倍のコストが必要です。オープンレジャーコストが上昇する場合は、コスト水準はトランザクションの基本コストに比例します。
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### 手数料レベル
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_手数料レベル_ は、トランザクションの最少コストと実際のコストとの相対的な差を表します。[オープンレジャーコスト](#オープンレジャーコスト)は絶対的なコストではなく手数料レベルで評価されます。比較する場合は以下の表を参照してください。
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| トランザクション | drop単位の最少コスト | 手数料レベルでの最少コスト | drop単位で倍のコスト | 手数料レベルで倍のコスト |
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|-------------|-----------------------|----------------------------|----------------------|---------------------------|
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| Referenceトランザクション(ほとんどのトランザクション) | 10 | 256 | 20 | 512 |
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| 4つの署名を持つ[マルチ署名済みトランザクション](multi-signing.html) | 50 | 256 | 100 | 512 |
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| [Key Resetトランザクション](transaction-cost.html#key-resetトランザクション) | 0 | (事実上無限) | なし | (事実上無限) |
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| 32バイトのプリイメージ付きの[EscrowFinishトランザクション](escrowfinish.html)。 | 350 | 256 | 700 | 512 |
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## トランザクションコストの問い合わせ
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`rippled` APIには、ローカル負荷ベースのトランザクションコストを問い合わせる方法が2つあります。`server_info`コマンド(人を対象とする)と`server_state`コマンド(マシンを対象とする)です。
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[FeeEscalation Amendment][]が有効である場合、[feeメソッド][]を使用してオープンレジャーコストを確認することができます。
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### server_info
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[server_infoメソッド][]は、`validated_ledger.base_fee_xrp`と同様に、前のレジャー時点のスケーリングされていない最低XRPコストを10進XRPの形式でレポートします。トランザクションを中継するために必要な実際のコストをスケーリングするには、その`base_fee_xrp`値に同じ応答内の`load_factor`パラメーターを掛けます。このパラメーターは、サーバーの現在の負荷レベルを表します。つまり、次の式になります。
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**XRP単位の現在のトランザクションコスト = `base_fee_xrp` × `load_factor`**
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### server_state
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[server_stateメソッド][]は、`rippled`の内部負荷計算の内容をそのままの表示形式で返します。この場合、有効負荷率は`load_base`に対する`load_factor` の割合です。`validated_ledger.base_fee`パラメーターは、[XRPのdrop](basic-data-types.html#通貨額の指定)単位の最低トランザクションコストをレポートします。この設計により、`rippled`では整数のみでトランザクションコストの計算ができ、サーバー負荷の微調整も十分に行えます。実際のトランザクションコストの計算は以下のようになります。
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**drop単位の現在のトランザクションコスト = (`base_fee` × `load_factor`) ÷ `load_base`**
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## トランザクションコストの指定
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署名されたすべてのトランザクションの[`Fee`フィールド](transaction-common-fields.html)には、トランザクションコストを含める必要があります。署名されたトランザクションのすべてのフィールドと同様に、このフィールドは署名の無効化を行わなければ変更できません。
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通常、XRP Ledgerはトランザクションを署名された _とおりに_ 実行します。(少なくとも、分散型コンセンサスネットワーク全体をコーディネートしてそれ以外のことを実行するのは難しいと思われます。)したがって、`Fee`フィールドに指定されたXRPの額が、ネットワーク内で指定されているどの現在の最低トランザクションコストをもはるかに上回っていたとしても、指定したとおりのXRPがすべてのトランザクションで消却されます。トランザクションコストでは、アカウントの[準備金](reserves.html)用に確保していたXRPも消却される場合があります。
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トランザクションに署名する前に、[現在の負荷ベースのトランザクションコストを調べる](#トランザクションコストの問い合わせ)ことをお勧めします。負荷スケーリングが原因でトランザクションコストが高い場合は、低下するまで待つことができます。トランザクションをすぐに送信するつもりがない場合は、トランザクションコストにおける将来の負荷ベースの変動を考慮して、少し高めのトランザクションコストを指定することをお勧めします。
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### トランザクションコストの自動指定
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オンラインでトランザクションに署名する場合は、`Fee`フィールドを省略できます。この場合、`rippled`または[RippleAPI](rippleapi-reference.html)が現在の要件に照らしてピアツーピアネットワークの状態を確認し、トランザクションに署名する前に`Fee`値を追加します。ただし、このようなトランザクションコストへの自動入力にはいくつかの欠点と制限事項があります。
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* トランザクションに署名し、分散するまでの間にネットワークのトランザクションコストが上昇した場合、そのトランザクションは承認されない場合があります。
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* 最悪の場合、トランザクションに`LastLedgerSequence`パラメーターが含まれているか、同じ`Sequence`番号を使用する新しいトランザクションによってそのトランザクションがキャンセルされない限り、トランザクションは明確に承認も拒否もされない状態のままとなってしまいます。ベストプラクティスについては、[信頼できるトランザクションの送信](reliable-transaction-submission.html)を参照してください。
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* 署名するトランザクションの`Fee`フィールドの正確な値は事前にわかりません。
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* `rippled`を使用している場合は、[signメソッド][]の`fee_mult_max`パラメーターと`fee_div_max`パラメーターを使用して、署名しようとしている負荷スケーリングに制限を設定することもできます。
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* オフラインのマシンから現在のトランザクションコストを調べることはできません。
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* [マルチ署名](multi-signing.html)の場合、トランザクションコストの自動指定は行えません。
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## トランザクションコストと失敗したトランザクション
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トランザクションコストの目的はXRP Ledgerピアツーピアネットワークを過度な負荷から保護することであるため、トランザクションが成功するかどうかにかかわらず、ネットワークに分散されるすべてのトランザクションにコストが適用されます。ただし、共有のグローバルレジャーに作用するため、トランザクションを検証済みレジャーに含める必要があります。したがって、`rippled`サーバーは[`tec`ステータスコード](transaction-results.html)(「tec」は「トランザクションエンジン - 請求手数料のみ」(Transaction Engine - Claimed fee only)を表します)で、失敗したトランザクションをレジャーに含めようとします。
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トランザクションコストは、トランザクションが実際に検証済みレジャーに含められた場合に、送信者のXRP残高から差し引かれるだけです。このことは、トランザクションが成功するか`tec`コードとともに失敗するかにかかわらず適用されます。
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トランザクションの失敗が[確定](finality-of-results.html)である場合、`rippled`サーバーによるネットワークへの中継は行われません。トランザクションは検証済みレジャーに含まれないため、誰のXRP残高にも影響することはありません。
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### 不十分なXRP
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`rippled`サーバーが最初にトランザクションを評価するとき、送信側アカウントにXRPトランザクションコストを支払うのに十分なXRP残高がない場合は、エラーコード`terINSUF_FEE_B`にてトランザクションを拒否します。これは`ter`(再試行)コードであるため、トランザクションの結果が[確定](finality-of-results.html)になるまで、`rippled`サーバーはネットワークへの中継を行わずにトランザクションを再試行します。
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トランザクションはすでにネットワークに配信されているけれども、アカウントにトランザクションコストを支払うのに十分なXRPがない場合は、結果コード`tecINSUFF_FEE`が発生します。この場合、アカウントからは可能なかぎりすべてのXRPが支払われるため、最終的に0 XRPになります。これは、`rippled` がトランザクションをネットワークに中継するかどうかを進行中のレジャーに基づいて判断するために起こります。しかしコンセンサスレジャーを作成するときにトランザクションは破棄されるか並べ替えられることになります。
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## Key Resetトランザクション
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特殊なケースですが、アカウントの[lsfPasswordSpentフラグ](accountroot.html)が無効であるかぎり、そのアカウントはトランザクションコスト`0`で[SetRegularKey](setregularkey.html)トランザクションを送信できます。このトランザクションにはアカウントの _マスターキーペア_ による署名が必要です。このトランザクションを送信すると、lsfPasswordSpentフラグが有効になります。
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この機能は、レギュラーキーが危害を受けた場合に、危害を受けたアカウントに使用可能なXRPがあるかどうかを気にすることなく、そのアカウントを復元できるように設計されています。このようにして、追加のXRPを送信する前にそのアカウントを再び管理できるようになります。
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[lsfPasswordSpentフラグ](accountroot.html)は無効になります。このフラグを有効にするには、マスターキーペアによって署名されたSetRegularKeyトランザクションを送信します。アカウントでXRPの[支払い](payment.html)が受け入れた場合、再び無効になります。
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[FeeEscalation Amendment][]が有効な場合、Key Resetトランザクションの名目トランザクションコストがゼロであっても、`rippled`は他のトランザクションよりもKey Resetトランザクションを優先します。
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## トランザクションコストの変更
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XRP Ledgerは、XRPの価値が長期的に変化することを見越して、最低トランザクションコストを変更するしくみを備えています。変更はすべて、コンセンサスプロセスによる承認が必要です。詳細は、[手数料の投票](fee-voting.html)を参照してください。
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<!--{# common link defs #}-->
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{% include '_snippets/rippled-api-links.md' %}
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{% include '_snippets/tx-type-links.md' %}
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{% include '_snippets/rippled_versions.md' %}
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